インシデントを起こしてしまったあと、
「私なんて看護師向いてない」
「またミスしたらどうしよう…現場に立つのが怖い」
こんな思いで頭の中がいっぱいになっていませんか?
看護師のインシデントは、患者さんの安全に直結します。
だからこそ、落ち込みや自分を責める気持ちが強くなるのは、ごく自然な反応です。
この記事は、そんな
- インシデントで強く落ち込んでいる
- ミスから立ち直れず、仕事が怖くなっている
- フラッシュバックや不眠、動悸に悩んでいる
といった方に向けた、「ミス後に立ち直れない看護師」のためのメンタルケアガイドです。
単に「気にしないで」と片づけるのではなく、
- 反省と自責の違い(学びに変える振り返り方)
- フラッシュバック・不眠・動悸へのセルフケア
- 上司・先輩への相談の仕方(そのまま使える言い方テンプレ)
- 「個人の努力」で終わらせない再発予防の仕組み化
- どうしてもつらいときの、休職・異動・転職という選択肢
まで、順番に整理していきます。
※「インシデントが続いている」「最近ずっとしんどい」という方は、
先にこちらの記事で限界サインもチェックしてみてください。
→ 看護師が限界を迎える前に気づきたいサイン

看護師がインシデントで落ち込むのは当たり前|まず知っておきたいこと

インシデントで強く落ち込むのは、責任感があるからこそです。
「患者さんに何かあったかもしれない」
「同じミスをまた繰り返したらどうしよう」
そう感じるのは、看護師として当たり前の反応です。
まずは、「自分だけが弱いわけじゃない」と知るところから始めましょう。
なぜここまで引きずってしまうのか(責任感・職場文化・働き方)
看護師がインシデントを引きずりやすい背景には、こんな要素があります。
- 命を預かる仕事であること
→ 「もし取り返しがつかなかったら」と極端に不安になりやすい - 「ミスは絶対ダメ」という職場の空気
→ インシデント報告=怒られる・評価が下がる、と思いやすい - 慢性的な人手不足・長時間労働
→ 心身が元々ギリギリで、1つのミスが“トドメ”になりやすい
「自分が弱いから」ではなく、
仕事の重さと環境の影響も大きいという視点を持てると、自分を少し責めにくくなります。
「涙が止まらない/怖くて現場に立てない」よくある反応パターン
インシデント後、こんな状態になる看護師は少なくありません。
- 報告のあと、涙が止まらなくなる
- 勤務前日から強い憂うつ感や動悸が出る
- 同じ場面になると、手が震えたり動けなくなったりする
- 夜になると何度も思い出して眠れない
- 「またミスするくらいなら辞めた方がいい」と感じてしまう
これらは、心が「すごく危険だった」と判断した出来事に対して、必死に身を守ろうとしているサインでもあります。
「これは危険サインかも?」と思ったら
たとえば、こんな状態が続いている場合は要注意です。
- 食欲が極端に落ちた/反動で食べ過ぎてしまう
- 休みの日もずっと仕事・インシデントのことを考えてしまう
- 職場に近づくだけで涙が出そうになる・動悸がする
「もう少し頑張れるかも」ではなく、
一度立ち止まって、自分の“限界サイン”を確認するタイミングかもしれません。
インシデントに限らず、看護師が限界を迎える前のサインは、こちらの記事で整理しています。
→ 「忙しい看護師のストレス対策|原因・サイン・相談まで解説」

「反省」と「自責」はちがう|ミスを学びに変える振り返りの型

インシデントのあと、
「なんであんなこともできなかったんだろう」
「私なんて看護師失格だ」
と、何度も頭の中で自分を責めていませんか?
ここで意識したいのは、「自責」と「反省」は別物ということです。
自分を責め続けるとメンタルに何が起こるか
自責モードが続くと…
- 「またミスするかも」と過度に不安になる
- 新しいこと・責任のある業務が怖くなる
- 人に頼れず、一人で抱え込むクセがつく
- 仕事そのものが嫌いになってしまう
「ミスを減らしたい」という本来の目的から、どんどん遠ざかってしまうんですよね。
事実・原因・次の一歩に分けて整理するステップ
そこで、「反省」は3つの箱に分けて考えてみます。
- 事実(何が起きたか)
- 要因(なぜ起きたか:自分+環境)
- 次の一歩(自分がやること+職場に相談したいこと)
例)
- 事実:ダブルチェックをせずに投与し、投与量を誤った
- 要因:
- 自分:時間に追われて焦っていた
- 環境:ラベルが似ていた/ダブルチェックを頼みにくい雰囲気
- 次の一歩:
- 自分:投与前に「一度立ち止まるチェックリスト」を作る
- チーム:ラベルの見やすさ・置き場所を見直すよう相談する
「私はダメな看護師だ」で終わらせず、
「どんな条件が重なるとミスが起きやすいか?」に目を向けることが大事です。
3行で書ける「振り返りメモ」テンプレ
メモアプリやノートに、そのまま使える振り返りテンプレです。
①【起こったこと】
②【要因(自分/環境)】
③【次にやること(自分/職場に相談したいこと)】
③「次にやること」まで書けたら、その振り返りはもう“自責”ではなく“学び”になっています。
フラッシュバック・不眠・動悸…体にサインが出たときのセルフケア

頭では「切り替えないと」と思っても、
体は正直で、フラッシュバック・不眠・動悸としてサインが出ることがあります。
ここでは、今すぐできるセルフケアの具体的な方法をまとめます。
夜になると何度も思い出して眠れないときの対処法
- 「眠れない自分はダメだ」とさらに責めない
- 思い出してしまうのは、心が必死で整理しようとしている反応と捉える
- ベッドの中で振り返りを続けるのではなく、紙に書いて一度外に出す
メモ例:
「今日もインシデントのことを思い出した。
明日はこの記事の○○の部分を読み返す/上司に△△を相談する。」
頭の中だけでぐるぐる考えるより、
一度紙に“預けて”から寝るほうが、脳に“今は休んでいい”と伝わりやすくなります。
動悸・息苦しさが出たときに試したい呼吸法
不安が高まったときは、呼吸と感覚に意識を向けるだけでも違います。
- 4秒かけて鼻からゆっくり吸う
- 6秒かけて口から細く長く吐く
- 無理のない範囲で1〜2分ほど続ける
椅子に座った状態で、
- 足の裏が床についている感覚
- お尻が座面に触れている感覚
- 手がポケットや膝に触れている感覚
など、今この瞬間の体の感覚に意識を向けるのもおすすめです。
受診を考えた方がよいタイミングと相談先
次のような状態が2週間以上続く場合は、
一人で抱え込まず、受診も選択肢に入れてください。
- ほとんど眠れない、または早朝に必ず目が覚めてしまう
- 食欲が極端に落ちた/過食が続いている
- 出勤前に強い動悸・吐き気・震えが出る
- 「消えてしまいたい」「死んでしまいたい」といった考えが繰り返し浮かぶ
※「死にたい」「消えたい」気持ちが強いときは、
信頼できる人・医療機関・相談窓口などにできるだけ早くつながることが大切です。
相談先の例:
- 職場の産業医・保健師
- メンタルヘルス窓口(EAPなど)
- 心療内科・精神科
- 看護協会などの電話相談
受診=大げさ、弱い では決してありません。
インシデントをきっかけに心のバランスを崩す看護師は、決して少なくありません。
つらさが長く続く前に、専門家にバトンを渡すのも大事なセルフケアです。
一人で抱え込まない|上司・先輩への相談の仕方と言い方テンプレ

「忙しそうで声をかけづらい」
「またその話?と思われそうで怖い」
そう感じて、相談したいのにできないまま…という方も多いです。
ここでは、そのまま使える短文テンプレを用意しました。
相談前に整理しておきたい3つのポイント
話す前に、ざっくりでいいのでこの3つだけメモしておくとスムーズです。
- 経緯:いつ・どんな状況で起きたインシデントか
- 今のつらさ:どんなことで困っているか(不安・不眠・怖さなど)
- お願いしたいこと:一緒に考えてほしいこと(再発予防・勤務調整など)
「完璧に説明しなきゃ」と思わなくて大丈夫。
今の自分の言葉で伝えることを大切にしてください。
上司に伝えるときの短文テンプレ(そのまま使える例文)
口頭でもメッセージでも使える例です。
- 「先日のインシデントの件で、少しご相談したいことがあります。今も不安が強くて、再発予防も含めて一度お話しできませんか。」
- 「インシデント後から眠れない日が続いていて、このままの働き方で大丈夫なのか不安です。一度、今の状況をご相談させてください。」
- 「自分なりに振り返りはしたのですが、同じミスを繰り返さないために、業務の進め方や確認方法を一緒に見直していただけないでしょうか。」
ポイントは、「怒ってほしい・責めてほしい」ではなく「一緒に考えてほしい」と伝えることです。
看護師上司に相談したいけど、「またその話?」って思われないか不安で…。



“一緒に考えてほしい”って伝えたら大丈夫。
まずは「少し相談したいことがあって…」の一言からでいいよ。
信頼できる先輩・同僚への頼り方と、避けたい言い方
先輩・同僚には、こんな声のかけ方がおすすめです。
- 「ちょっと聞いてもらってもいいですか? インシデントのことがまだ怖くて…。」
- 「もし気づいたところがあったら、私のケアの仕方で教えてほしいです。」
反対に、次のような言い方は、自分も相手も苦しくなりやすいので要注意です。
- 「私ってやっぱり看護師向いてないですよね?」(自分を極端に下げる)
- 「あのとき○○さんが教えてくれなかったから…」(誰かを“悪者”にする)
つらさを共有するのはOKですが、
誰か一人を責める形ではなく、「どうすればよかったか」を一緒に考えられる関係を意識してみてください。
「個人の努力で終わらせない」再発予防の仕組み化チェックリスト


インシデントが起きたときに、
「今後はもっと気をつけます」
「確認を徹底します」
で終わってしまう場面、よくありますよね。
でも、それだけだと同じ条件がそろったときに再発しやすいのが現実です。
ここでは、“仕組みで防ぐ”ためのチェックリストを紹介します。
シフト前・申し送り前にできるセルフチェック
□ 今日の体調・睡眠状態はどうか、1分だけ振り返ったか
□ 「ここが混みそう・事故が起きやすそう」という時間帯をイメージできているか
□ 「この処置・この薬だけは、必ずダブルチェックする」と決めているか
セルフチェックは、「完璧にするため」ではなく
「危険な状態に近づいていないか気づくため」のものと捉えてみてください。
チームで共有したいヒヤリ・ハットの活かし方
□ ヒヤリ・ハットを、個人の失敗談で終わらせずチームで共有できているか
□ 「誰が悪いか」ではなく「何が起こりやすい状況か」の視点で話せているか
□ 新人さんや中堅が「実はこんなことがあって…」と打ち明けやすい雰囲気があるか
ヒヤリ・ハットは、罰する材料ではなく未来の患者さんを守る材料です。
仕組みで防げるミス/どうしてもゼロにできないミスの線引き
現実問題として、どんなに注意してもゼロにはできないミスもあります。
- 仕組みや環境を整えることで減らせるミス
- 人間である以上、どうしても可能性をゼロにはできないミス
この線引きをチームで共有できていると、
「全部自分のせいだ」と抱え込まずに済む土台ができます。
インシデントが怖くて現場に立てないときの選択肢|休職・異動・転職


「インシデントが怖くて、もう現場に立つのがしんどい…」
そんなときは、
- 今のまま続ける
- 一度休んで立て直す
- 部署を変える
- 職場自体を変える
など、選択肢を整理して考えることも大切です。
まずは心と体を守るためにできること
- 有給・公休を使って、心身を休める期間をつくる
- 主治医や産業医と相談し、夜勤や勤務日数を一時的に調整する
- 負担の大きい業務を一時的に減らせないか、上司に相談する
「一度立ち止まること」は、逃げではなく、長く看護を続けるための“メンテナンス”です。
同じ部署で続けるか迷ったときの判断ポイント
- 今の部署に、相談できる上司・先輩はいるか
- 「再発予防」について一緒に考えてくれる雰囲気があるか
- 自分が大事にしたい看護観と、部署の方針が大きくズレていないか
紙に書き出してみると、
「もう少しここでやってみたい」
「やっぱり環境を変えた方が良さそう」
といった自分の本音が見えやすくなります。
部署異動で環境を変えるという選択肢
同じ病院内でも、
- 急性期病棟 → 回復期・慢性期・地域包括
- 忙しすぎる病棟 → 外来・検査部門
など、環境が変わるだけで心の負担がぐっと軽くなるケースも多いです。
部署異動のタイミングや、師長への相談の仕方などは、こちらの記事で詳しくまとめています。
→ 「看護師の部署異動ガイド|辞める前にできる配置転換の相談・伝え方」


「もう限界かも」と感じたときの転職という選択肢
「この病院で働き続けるイメージがどうしても持てない」
「インシデント後の雰囲気がつらくて、毎日しんどい」
そんなときは、転職も自分と患者さんを守るための選択肢になり得ます。
- 忙しすぎる急性期病棟から離れる
- インシデントをチームで振り返る文化がある職場を探す
- 夜勤少なめ・日勤のみの職場を検討する



インシデントがきっかけで異動や転職を考えるのって、やっぱり“逃げ”ですよね…?



私は、“これからも安全に看護を続けるための環境調整”だと思ってるよ。
自分を守る選択ができる人ほど、長くいいケアが続けられるからね。
「辞め方」「求人の選び方」を含めて広く整理した記事はこちらです。
→ 「看護師転職完全ガイド|後悔しない準備・よくある失敗・成功のコツ」


まとめ|ミスで終わらせず、これからの看護人生につなげる


最後に、この記事のポイントをコンパクトに振り返ります。
過去の自分を責め続けないための3つの約束
- 「ミス=人としてダメ」ではないと何度でも思い出す
- 自責ではなく「事実・要因・次の一歩」で振り返る
- 一人で抱え込まず、上司・先輩・専門家にバトンを渡す
インシデントは、決して軽く扱ってよい出来事ではありません。
でも同時に、あなたの看護人生すべてを否定する出来事でもありません。
一人で抱え込まないための相談先リスト
- 職場の上司・師長・信頼できる先輩
- 産業医・保健師
- 心療内科・メンタルクリニック
- 看護協会などの相談窓口
「どこに相談したらいいか分からない」ときは、
いちばん話しやすい人に、“しんどさ”を言葉にしてみることからで大丈夫です。
今しんどいあなたへ伝えたいメッセージ
インシデントでここまで落ち込んでいるあなたは、責任感の強い看護師です。
何度も思い出してしまうのは、心が必死に整理しようとしている反応です。
「また笑って現場に立つために、今は少し立ち止まってもいい」と、自分に許可を出してあげてください。
このページが、
「ミスして落ち込んでいる看護師さん」と「これからの看護人生」をつなぐ、静かな中継地点になれば嬉しいです。
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