「マーゲン出しといて」と言われて、
何のことか分からず固まったことはありませんか?
手術室の会話は、略語とドイツ語由来の言葉だらけ。
新人のうちは「何語?」となるのが当たり前です。
看護師オペ室の会話、略語が多すぎて
最初は本当に何語か分かりませんでした。
とりあえず必死にメモしてた記憶があります。
この記事では、現場で本当によく飛び交う言葉だけを、
新人オペ看向けに一覧でまとめました。
ブックマークして、分からない言葉に出会うたびに見に来てください。
結論|略語は「3つの系統」を知ると一気に覚えやすくなる


手術室で使われる言葉は、実はほぼ3つの系統に分かれます。
- ドイツ語由来の医療用語:マーゲン・アッペ・カイザーなど
- 英語・術式の省略形:ラパコレ・TKAなど
- その施設だけの呼び名:器械のニックネームなど
知らない言葉に出会ったら「どの系統かな?」と考えてみてください。
それだけで、丸暗記が「推測」に変わります。
ここからは、新人が現場で出会う順番にどうぞ。
まず覚えたい「現場の動き・役割」の言葉


略語の前に、毎日の会話に出てくる基本の言葉からです。
初日から飛び交うので、意味だけ先に知っておくと安心です。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 器械出し(直介) | 直接介助。術者に器械を渡す役割 |
| 外回り(間接介助) | 麻酔対応・記録・物品出しなどを担う役割 |
| 手洗い | 手術時手指消毒。「手洗いに入る」=清潔メンバーとして手術に入ること |
| 清潔/不潔 | 滅菌された領域か、そうでないか |
| ガーゼカウント | 体内遺残を防ぐためのガーゼ枚数確認 |
| タイムアウト | 執刀前に全員で患者・術式・部位を確認すること |
| ドレーピング | 滅菌した覆布(ドレープ)で清潔野を作ること |
| 電メス | 電気メス。切開と止血に使う |
| サクション | 吸引。「サクション取って」で吸引管を指すことも |
| ターニケット | 駆血装置。四肢の手術で出血を抑える(整形で頻出) |
| メーヨー台 | 器械出しの手元に置く可動式の器械台 |
| 鑷子(セッシ) | ピンセット。有鉤・無鉤などの種類がある |
| 筋鈎(きんこう) | 筋肉などを引いて視野を確保する鈎 |
| モス | モスキート鉗子(小型の止血鉗子) |
器械の名前そのものの覚え方は、こちらで詳しくまとめています。
▶ 手術器械の覚え方|コッヘル・ペアン・ケリーの見分け方と覚えるコツ
麻酔・薬剤まわりの言葉


外回りに入ると、麻酔科医との会話でよく出てくる言葉です。
意味が分かると、指示への反応が一気に速くなります。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| エピ | 硬膜外麻酔(エピドラール) |
| ルンバール | 腰椎麻酔・腰椎穿刺 |
| フルストマック | 胃に内容物が残っている状態。誤嚥リスクが高い緊急手術で使う |
| 抜管(ばっかん) | 気管チューブを抜くこと |
| キシロ | キシロカイン(局所麻酔薬) |
| ボスミン | アドレナリン。局所麻酔に混ぜる・止血に使うなど |
| ヘパ生(へパせい) | ヘパリン加生理食塩水 |
| サット | SpO2(酸素飽和度)。「サット下がってる」のように使う |



初めての外回りで「サット見てて」と言われて、
モニターのどこを見ればいいのか分からず焦った記憶があります。
麻酔の知識をまとめて補強したい人は、
麻酔に強い本を参考書9選の「麻酔看護のおすすめ本」で紹介しています。
診療科の呼び方


手術予定表や申し送りでは、診療科の名前も略して呼ばれるのが普通です。
読み方は施設によって差があるので、一例として押さえてください。
| 呼び方 | 診療科・意味 |
|---|---|
| 整形(せいけい) | 整形外科 |
| 脳外(のうげ) | 脳神経外科 |
| 心外(しんげ) | 心臓血管外科 |
| 消外(しょうげ) | 消化器外科 |
| 呼外(こげ) | 呼吸器外科 |
| 形成(けいせい) | 形成外科 |
| 乳外(にゅうげ) | 乳腺外科 |
| ギネ | 産婦人科(Gynäkologieから) |
| ウロ | 泌尿器科(Urologyから) |
| ジビ | 耳鼻咽喉科 |
術式の略語


数は多いですが、覚えるのは自分の担当科のぶんだけで十分です。
目次から担当科のところへ飛んで使ってください。
どの科でも聞く
まずは、科を問わずよく出てくる4つからです。
| 略語 | 意味 |
|---|---|
| ラパロ | 腹腔鏡(腹腔鏡手術全般) |
| ダヴィンチ | ロボット支援手術(手術支援ロボットの名前) |
| デブリ | デブリードマン(壊死組織や感染組織の除去) |
| 気切(きせつ) | 気管切開術 |
| ヘルニア | ヘルニア修復術(鼠径・腰椎など部位で意味が変わる) |
消化器外科
胃・腸・胆嚢・膵臓など、お腹まわりの手術で使う言葉です。
| 略語 | 意味 |
|---|---|
| ラパコレ | 腹腔鏡下胆嚢摘出術 |
| ラパアッペ | 腹腔鏡下虫垂切除術 |
| DG/TG | 幽門側胃切除術/胃全摘術 |
| LAR | 低位前方切除術(直腸) |
| マイルズ | 直腸切断術(Miles手術) |
| ハルトマン | 直腸を切除しストマを造る手術 |
| PD | 膵頭十二指腸切除術 |
| ストマ | 人工肛門・人工膀胱(の造設) |
| イレウス | 腸閉塞(の解除手術) |
整形外科
骨・関節・脊椎の手術。人工関節と骨折の言葉が中心です。
| 略語 | 意味 |
|---|---|
| TKA | 人工膝関節置換術 |
| THA | 人工股関節置換術 |
| BHA | 人工骨頭置換術 |
| ORIF | 観血的整復固定術(骨折の手術) |
| ガンマネイル | 大腿骨転子部骨折を髄内釘で固定する手術 |
| ACL再建 | 前十字靭帯再建術 |
| ラミネク | ラミネクトミー(椎弓切除術) |
| PLIF/TLIF | 腰椎椎体間固定術 |
| 抜釘(ばってい) | 骨折治療後のプレートや釘を抜く手術 |
| アンプタ | 切断術(amputation) |
産婦人科
子宮・卵巣まわりの手術でよく聞く言葉です。
| 略語 | 意味 |
|---|---|
| カイザー | 帝王切開(ドイツ語Kaiserschnittから) |
| ATH | 腹式単純子宮全摘術 |
| TLH | 腹腔鏡下子宮全摘術 |
| コーヌス | 子宮頸部円錐切除術 |
| BSO | 両側付属器(卵巣・卵管)切除術 |
泌尿器科
経尿道の内視鏡手術(TUR系)が代表格。
| 略語 | 意味 |
|---|---|
| TUR-BT | 経尿道的膀胱腫瘍切除術 |
| TUR-P | 経尿道的前立腺切除術 |
| RALP | ロボット支援前立腺全摘除術 |
| TUL | 経尿道的尿管結石破砕術 |
| 腎摘(じんてき) | 腎摘出術 |
心臓血管外科
心臓と大血管、スケールの大きな手術で飛び交う言葉です。
| 略語 | 意味 |
|---|---|
| CABG | 冠動脈バイパス術 |
| AVR/MVR | 大動脈弁/僧帽弁置換術 |
| TAVI | 経カテーテル大動脈弁留置術 |
| EVAR | 腹部大動脈瘤のステントグラフト内挿術 |
| PM植込み | ペースメーカー植込み術 |
呼吸器外科
肺の手術は、胸腔鏡(VATS)が主流になっています。
| 略語 | 意味 |
|---|---|
| VATS(バッツ) | 胸腔鏡下手術 |
| ロベクトミー | 肺葉切除術 |
脳神経外科
開頭だけでなく、穿頭やシャントの手術もあります。
| 略語 | 意味 |
|---|---|
| クリッピング | 脳動脈瘤クリッピング術 |
| バーホール | 穿頭術(頭蓋骨に小さな穴を開ける) |
| CEA | 頸動脈内膜剥離術 |
| VPシャント | 脳室と腹腔をつなぎ髄液を流すシャント術 |
眼科
白内障手術は件数が多く、新人が担当する機会も多い科です。
| 略語 | 意味 |
|---|---|
| PEA+IOL | 白内障手術(水晶体を砕いて吸引し眼内レンズを入れる) |
| Vit | 硝子体手術(vitrectomy) |
| トラベク | 緑内障の濾過手術(トラベクレクトミー) |
耳鼻咽喉科
鼻・喉の内視鏡手術が中心の科です。
| 略語 | 意味 |
|---|---|
| ESS | 内視鏡下副鼻腔手術 |
| ラリマイ | 喉頭微細手術(ラリンゴマイクロサージャリー) |
| 扁摘(へんてき) | 口蓋扁桃摘出術 |
形成外科
皮膚や組織の移植・再建ならではの言葉があります。
| 略語 | 意味 |
|---|---|
| 植皮(しょくひ) | 皮膚移植術(スキングラフト) |
| 皮弁(ひべん) | 組織を血流ごと移動させる再建術(フラップ) |
乳腺外科
乳がん手術まわりの言葉が中心です。
| 略語 | 意味 |
|---|---|
| Bt/Bp | 乳房全切除術/乳房部分切除術 |
| センチネル | センチネルリンパ節生検(SNB) |
VATSを「バッツ」と読むように、
アルファベット略語は施設ごとに読み方の癖があります。
まずは自分の担当科の手術予定表に出てくるものから覚えるのが近道です。
ベテランがよく使う「ドイツ語由来」の言葉


日本の医療現場には、ドイツ医学の時代の言葉が今も残っています。
ベテランほどよく使うので、新人が一番戸惑うゾーンです。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| マーゲン | 胃(Magen) |
| ダルム | 腸(Darm) |
| アッペ | 虫垂炎・虫垂切除(Appendizitis) |
| ヘモ | 痔核(Hämorrhoiden) |
| カイザー | 帝王切開(Kaiserschnitt) |
| ハルン | 尿(Harn) |
| アナムネ | 病歴・既往の聴取(Anamnese) |
| クランケ | 患者さん(Kranke) |
| オーベン | 指導する側の上級医(oben=上) |
| ネーベン | 指導を受ける側の若手医師(neben=傍ら) |
最近は使わない施設・世代も増えていますが、
「言われたら分かる」状態にしておくと安心です。
施設だけで通じる「うちの言葉」に注意


ここまでの言葉は多くの施設で通じますが、
器械のニックネームや物品の呼び方は、施設ごとに驚くほど違います。
「前の病院ではこう呼んでいた」が通じないのは普通のことなので、
入職・異動したら「うちの呼び方」を最初に確認しましょう。
ノートに「一般的な名前/うちの呼び名」を並べて書くのがおすすめです。



先輩たちが当たり前に使う言葉ほど、今さら聞きにくいんですよね。
だから私は、新人さんに聞かれたら全力で答えると決めています。
略語を覚える3つのコツ


① 聞いたその日のうちにメモして確認する
分からなかった言葉は、その日のうちにメモして意味を調べます。
翌日に持ち越すと、聞いた場面ごと忘れてしまうからです。
② 「どの系統か」で推測するクセをつける
初めて聞く言葉でも、「ドイツ語っぽい」「術式の省略っぽい」と
系統の見当がつけば、会話の流れから意味を推測できます。
「推測→あとで確認」のサイクルが、いちばん記憶に残る覚え方です。
③ 分からないまま流さない
手術室の言葉は、患者さんの安全に直結します。
指示があいまいなまま動くのが一番危険なので、
「◯◯ってことで合ってますか?」と確認するのは、恥ではなく仕事です。
「何語?」の時期は必ず終わります
最初は呪文にしか聞こえなかった会話が、ある日ふつうに聞き取れている——
オペ室で働く人がみんな通ってきた道です。
メモが増えるほど、その日は近づいています。



メモした言葉が10個、20個と増えていくと、
オペ室の会話が「日本語」に聞こえてくる日がちゃんと来ますよ。
手術室の略語でよくある質問


まとめ|言葉が分かると、オペ室は一気に働きやすくなる


- 略語は「ドイツ語由来・省略形・うちの言葉」の3系統で整理する
- 担当科に出てくる言葉から覚えれば十分
- 分からない言葉はその日のうちにメモ→確認
- あいまいなまま動かない。確認は恥ではなく仕事
言葉が分かるようになると、手術の流れが読めるようになり、
先読みの動きもできるようになっていきます。
今日聞き取れなかった一言を、明日のメモの1行目にしましょう。
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