手術室への配属が決まった。
希望していた人も、そうでなかった人も、たぶん最初に思うのは同じことだと思います。
「で、手術室って何をするところなんだろう」
私も同じでした。希望を出していたので配属が決まったときは嬉しかったのですが、
学校では手術室のことをほとんど習っていません。
実習で少し見学した程度で、そこで働く自分がまったく想像できませんでした。
この記事は、そのときの私に向けて書いています。
看護師手術室に配属が決まりました。
でも、何をしておけばいいのか分かりません…。



私も同じでした。
先に言っておくと、初日までに準備することは
ほとんどありません。
結論:初日までに勉強しなくていい


先に結論を書きます。
配属が決まってから初日までに、器械を覚えたり参考書を読み込んだりする必要はありません。
理由は単純で、最初は見学からだからです。
いきなり器械を渡されることも、患者さんを一人で担当することもありません。
正直に言うと、私は配属が決まってから初日まで、何も準備しませんでした。
何をしていいか分からなかった、というのが本当のところです。
そして今振り返っても、そのことを後悔はしていません。
ただし、ひとつだけ後悔していることがあります
準備しなかったこと自体は後悔していません。
でも、ひとつだけ「知っておきたかった」と思うことがあります。
手術室で、実際にどんなことをしているのか。
器械の名前でも、術式の知識でもありません。
そこにいる人たちが、何をしているのか。
それを知らないまま入ったので、
最初の数日は目の前で起きていることの意味がまったく分かりませんでした。
見学しているのに、何を見ていいか分からない。あの時間は、少しもったいなかったと思います。
見学の日に見てほしいのは「看護師の動き」


もし今、配属されたばかりの新人さんに一つだけ伝えられるなら、これを言います。
手術ではなく、看護師の動きを見てください。



術野はあとからいくらでも見られます。
でも「看護師がどう動く仕事なのか」を
まっさらな目で見られるのは今だけです。
見学というと、つい術野のほうを見てしまいます。
何が行われているのか気になりますし、そちらのほうが分かりやすい。
でも、あなたがこれからやるのは手術ではなく、看護師の仕事です。
見るべきなのは、こちらです。
- 器械出し看護師の手元:どのタイミングで、どの器械を出しているか
- 器械出し看護師の目線:術野を見ているのか、器械台を見ているのか
- 外回り看護師の動線:部屋の中をどう動いているか、何を取りに行っているか
- 外回り看護師が記録している場面:いつ、何を書いているか
- 誰と誰が、どんなやり取りをしているか:声かけのタイミングと内容
「その人が、次に何をするか」を予想しながら見ると、さらに解像度が上がります。
当たらなくて構いません。
予想しようとすると、自然に細かいところを見るようになります。
手術の中身は、あとから覚えられます。
でも「看護師がどう動く仕事なのか」は、見学のときにしか、まっさらな目で観察できません。
2つの役割がどう違うのかは、こちらで整理しています。
学校で習わないのに、新人がいちばん最初に問われること


手術室に来て、学校との違いをいちばん強く感じるのは、たぶんここです。
清潔と不潔の感覚です。



清潔って、きれいにしておくこと…
じゃないんですか?
私は、新人にとっていちばん大切なのはこれだと思っています。
器械の名前より、術式の知識より先に、ここが体に入っているかどうかで働きやすさが変わります。
「きれい」と「清潔」は違う
日常の言葉で「きれい」と言えば、汚れていないことを指すはずです。
手術室の「清潔」はそれとは別で、滅菌されているかどうかで決まります。
見た目がどれだけきれいでも、滅菌されていないものは不潔です。
逆に、床に近い高さにあっても滅菌された物は清潔です。この切り替えが、最初はうまくできません。
目に見えない線がある
手術室には、目には見えないけれど全員が共有している境界があります。
清潔なガウンと手袋を着けた人が触れていい範囲と、そうでない範囲です。
新人のうちは、この線が見えません。自分がどちら側にいるのか分からなくなる瞬間が必ずあります。
私もそうでした。
迷ったときの原則
動かない
触らない
先輩に聞く
勝手に判断して動くほうが、ずっと問題になります。
配属前にできることがあるとすれば
この感覚は、実物の中でしか身につきません。ただ、
「清潔と不潔という考え方が、手術室ではすべての基準になる」と知っておくだけで、
見学の見え方が変わります。
先輩の動きを見ていて「なぜ今、遠回りしたんだろう」と思ったら、たいていこの線が理由です。
配属前によくある不安に、正直に答えます


内臓を見て、倒れたりしないか



内臓を見たことがないので、
手術中に倒れないか心配です…。
これは私が実際に不安だったことです。
それまで内臓を見たことがなかったので、自分が倒れないか心配でした。
結論から言うと、手術中に見えるのは術野だけです。
患者さんの体には覆布がかかっていて、見えているのは限られた範囲だけです。
テレビや教科書の写真とは、見え方がまったく違います。
それに見学のあいだは、無理に近づく必要がありません。
体調が悪くなりそうなら、その場を離れて大丈夫です。
それで責められることはありませんし、そういう人は珍しくありません。
不安なら、先に先輩に伝えておくのがいちばんです。
「気分が悪くなったら離れます」と一言言っておけば、周りも構えてくれます。
血が苦手でも大丈夫か
苦手だと自覚している人ほど、事前に伝えておいたほうがいいです。
隠して倒れるより、言っておいて離れるほうが、周りにとっても安全です。
慣れる人が多いですが、全員が慣れるとは言いません。やってみないと分からない部分です。
体力がもつか
立っている時間は長いです。
ただし新人のうちは、長時間の手術にいきなり入ることは多くありません。
体力は徐々についていきます。
実務的な対策としては、靴とインソールを見直すのがいちばん効きます。
怒られるのが怖い
手術室は、緊張感の高い場所です。声が短くなったり、指示が強くなったりすることはあります。
ただ、それは新人個人に向けられたものとは限りません。
患者さんの安全がかかっている場面では、言葉が省略されます。
最初はそれを「怒られた」と受け取ってしまいがちです。
この感じ方については、別の記事でも書いています。
同期と差がついたらどうしよう
配属直後は、全員が同じスタート地点です。学校で手術室を詳しくやってきた人はいません。
そして手術室の成長は、担当した症例によって進み方が変わります。
比べる意味があまりない環境です。
最初の1ヶ月は、何をするのか


私の場合は、中材業務と見学から始まりました。
中材から始まるのには理由がある
中材(中央材料室)は、使い終わった器械を洗浄し、組み立てて、滅菌する場所です。
手術室の裏側にあたる部署です。
ただし中材業務が看護師の仕事に入っていない病院もあります。
外部委託していたり、専門のスタッフが担当していたりする施設です。
その場合は見学や物品の準備から始まるので、ここが無くても遅れているわけではありません。
ここから始まるのには理由があります。
- 器械を手に取って覚えられる:術中は緊張していて覚えられない。中材なら落ち着いて見られる
- 器械の名前と形が結びつく:写真で覚えるより、実物のほうが残る
- 1つの手術で何がセットになるかが分かる:組み立てるので、まとまりで覚えられる
- 清潔・不潔の考え方が身につく:滅菌の工程そのものを見ることになる
最初は「まだ手術に入れないのか」と思うかもしれませんが、
ここで器械に触っておいた時間は、後から効いてきます。



私も「早く手術に入りたい」と思っていました。
でも器械を落ち着いて見られる時間は、
いま思うと貴重でした。
そのあとの進み方
進み方は施設や配属科によって差が大きいので、「何ヶ月でこうなる」とは言えません。
同じ病院でも、症例の入り方によって変わります。
ただ大まかには、見学から始まり、外回りの一部を任され、簡単な手術の器械出しへ、
という順に進んでいくことが多いです。
1年を通してどう覚えていくかは、こちらにまとめました。
▶ 手術室看護師1年目の教科書|覚えること・勉強法・つまずき対策
初日までにやるなら、これだけ


ここまで「勉強しなくていい」と書いてきましたが、やるとしたら何がいいかもまとめておきます。
どれも勉強ではなく、イメージを持つためのものです。
1. 手術室の1日の流れを知っておく
朝の申し送りから、患者さんの入室、麻酔、手術、退室まで。
流れを頭に入れておくだけで、見学の日の解像度が変わります。
「今この人は何をしているんだろう」ではなく「今は麻酔の導入だな」と分かるだけで、
見えるものが増えます。
2. 飛び交っている言葉を、少しだけ見ておく
手術室は略語だらけです。全部覚える必要はありませんが、
「そういう言葉がある」と知っているだけで、聞き取れる量が変わります。
3. 持ち物だけは、先に揃えておく
これは唯一「初日までに済ませておくとラク」なものです。当日に慌てないための実務的な準備です。
やらなくていいこと


逆に、先回りしてやらなくていいことも書いておきます。
器械の名前を暗記する
これは配属後で間に合います。というより、実物を見る前に名前だけ覚えても、ほぼ残りません。
名前と現物が結びついて、はじめて使える知識になります。
配属後は、中材業務や見学、物品の準備など、実物に触れる時間が必ずあります。
覚える機会は、ちゃんと用意されています。
分厚い専門書を買い込む
参考書は、配属後に「必要だと感じたもの」を買うほうが失敗しません。
配属前は何が必要か分からないので、選びようがないんです。
買うとしても1冊、全体像がつかめるものだけで十分です。
術式を予習する
どの科に入るか、どの手術に入るかは、行ってみないと分かりません。
予習のしようがない部分です。
実習の記憶を頼りに構える
看護学生の実習で手術室を見た人もいると思いますが、
あのときの見学と、働く側の視点はまったく別物です。
「一度見たことがある」を前提にしないほうが、素直に覚えられます。
行ってからの数日は、分からないまま進みます


準備の話はここまでです。
最後に、行ってから実際に起きることを書いておきます。
ここを知らずに行くと、自分だけができていないように感じてしまうからです。
質問が出てこなくても、気にしなくていい
分からないことだらけで1日が終わります。それが普通です。
- 何をしているのか分からない
- 何を聞けばいいのかも分からない
- 質問すること自体が思いつかない
私もそうでした。これは能力の問題ではなく、情報が足りていないだけです。
何も知らない状態では、疑問の形にすらなりません。
だから、初日に質問できなくても大丈夫です。
数日見ていると「これは何ですか」が自然に出てくるようになります。
質問が出てきたら、それは分かってきた合図だと思っていいです。
手術中でも、聞いていい場面はあります
ひとつだけ、聞くタイミングの話をしておきます。
手術中は質問してはいけない、と身構えなくて大丈夫です。
穏やかに進行しているときなら、その場で聞いて構いません。
むしろ目の前で起きていることをその場で聞けたほうが、あとから思い出すより頭に残ります。
待ってほしいのは、急変しているときと、バタバタしているときです。
その場面では全員が同じ方向を向いているので、質問は後に回してください。
返事が短くなったり、返ってこなかったりすることもありますが、
それは機嫌の問題ではありません。手が離せない場面だっただけです。
聞くタイミングの目安
聞いていい
穏やかに進行しているとき
手術と手術のあいだ、片付けや部屋の準備のとき
後に回す
急変しているとき
その場がバタバタしているとき
そのときに聞けなかったことは、メモしておいて区切りでまとめて聞く。
それだけで、返ってくる答えの量がかなり変わります。
不安なまま行って大丈夫です
希望して配属された人でも、不安はあります。私がそうでした。
嬉しいのと、不安なのは、同時に存在します。「希望したのに不安なんて」と思う必要はありません。
学校で習っていないことをこれから覚えるのですから、分からなくて当たり前です。
不安なままで大丈夫です
そして手術室は、最初の1年がいちばんしんどい場所でもあります。
それも先に知っておいていいことだと思います。
しんどいのは、あなたの適性の問題ではありません。
順番に覚えていけば、必ず動けるようになります。
手術室への配属でよくある質問


まとめ


手術室の配属前にできる準備は、勉強ではありません。
必要なのは、これから何をする場所なのかのイメージだけです。
この記事の要点を、最後にまとめます。
- 初日までに器械を覚える必要はない。最初は見学から始まる
- 見学では手術ではなく「看護師の動き」を見る
- いちばん大切なのは清潔・不潔の感覚。学校では習わないが、すべての基準になる
- 最初は見学から。中材業務がある施設ならそこも。器械に触れる時間は後から効く
- 内臓を見るのが不安でも、見えているのは術野だけ。無理に近づかなくていい
- 器械の暗記・分厚い専門書・術式の予習は、配属後で間に合う
配属が決まってから初日までにできることは、実はそれほど多くありません。それでいいです。
本番は、行ってからです。
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